pn型CdTe検出器

X線検出器に求められる性能は、可視光や赤外光と比べて大きく異なります。X線は非常に波長の短い光(電磁波)であり、検出器材料そのものも透過してしまうため、確率的にしかその光を捉えることができません。X線を捉えるためには、電子と相互作用させる必要があります。このため、検出器材料は電子をたくさん保持している(密度の高い)ほうが良いと言えます。

さらに、X線で撮影するためには可視光と同様に「カメラの受光素子」の構造が必要となります。現在、受光素子はシリコン(Si)に微細加工を施したCMOSカメラが主流であり、Siの半導体特性を利用して、高解像度、高感度、高速度、距離計測など様々な用途への応用を可能としております。

これまでは、X線センサもCMOSカメラを主軸としたイメージャであり、CMOSカメラでX線を捉えることができるように、シンチレータと呼ばれる密度の高い材料でできた「X線-可視光変換素子」をCMOSカメラと一体化することで、画像化を実現していました。

しかし、シンチレータによるX線の変換は感度と解像度に大きな劣化をもたらします。これは変換効率が低く、変換した光がシンチレータ内で散乱してしまうことに起因しており、原理的に回避することはできません。

私達は、シンチレータのような高い密度で、かつ、CMOSカメラのような機能性を持ち合わせた、CdTe(テルル化カドミウム)を採用することで、従来の性能を凌駕するX線センサを実現します。

レーザードーピングによるpn接合形成

CdTeはSiに比べると非常に加工の難しい材料で、X線センサを実現するデバイスとするためには高度な半導体プロセスが必要となります。 従来のCdTe検出器では、電極界面でしか接合を作れず、半導体受光素子としての特性を活かしきれていませんでした。

私達は、静岡大学で開発された、レーザーを用いたドーピング技術によりこの課題を克服し、埋込み型の接合の形成を実現しました。 これにより、より高性能なCdTe検出器を製造することに成功し、CdTeの特性をフルに活用したX線センサにおいて大きなアドバンテージを持っています。

論文等


1. Atomic numnber and electron density measurement using a conventional x-ray tube and a cdte detector / W Zou, T Nakashima, Y Onishi, A Koike, B hinomiya, H Morii, Y Neo, … / Japanese Journal of Applied Physics 47 (9R), 7317

2. Study of a CdTe high‐energy radiation imaging device fabrication by excimer laser processing / T Aoki, VA Gnatyuk, A Nakamura, Y Tomita, Y Hatanaka, J Temmyo / physica status solidi [c] 1 (4), 1050-1053

3. Application of CdTe photon-counting X-ray imager to material discriminated X-ray CT / T Nakashima, H Morii, Y Neo, H Mimura, T Aoki / Hard X-Ray and Gamma-Ray Detector Physics IX 6706, 67060C

4. Carrier transportation and polarization properties in CdTe diode detectors / A Koike, T Okunoyama, T Ito, H Morii, Y Neo, H Mimura, T Aoki / Nuclear Science Symposium Conference Record (NSS/MIC), 2010 IEEE, 3797-380

特許

1. Radiation dosimeter and radiation dose calculation method / T Aoki, A Koike / US Patent App. 14,405,905